インプラント矯正

特徴 術式 治療例 Q&A


インプラント矯正の特徴

 インプラント矯正の特徴は何でしょうか?

  ● 矯正力を加える時、作用&反作用を考えずに動かしたい歯に矯正力を加えられる

  ● 患者さんの自主的な協力を当てにしないで、矯正のステップを進めることができる

この二つではないでしょうか。

 通常の 歯列矯正 では常に『作用&反作用』が関係しますので、作用&反作用を考慮しながら動かしたくない歯を固定源として、動かしたい歯に 矯正 力を加えていきます。
その時に固定源となる歯を出来るだけ多くしたりすることで、可及的に反作用を打ち消すように、 矯正 治療のフォースシステムを考えます。  しかし、反作用を完全に無くすることは出来ませんので、そこにはどうしても限界がありました。
例えば、前歯を引っ込める場合は、奥歯全体を固定源として前歯全体を奥へ引っ込める!矯正力を加える というフォースシステムを考えます。  奥歯 vs 前歯 では奥歯の方が大きいし数も多いし、奥歯はあまり動かないだろう、と想定するわけですね。  でも、色々頑張っても、どうしても奥歯も動いてしまうのです。

これまで、そのような時には加強固定装置(リンガルアーチ や ヘッドギアなどの顎外固定装置)を併用したり、加強固定として顎内ゴムを使用したり、していました。  それでも、症例によっては上手く行かなかったり、患者さんの協力が悪く装置の使用時間が短くて十分な成果を上げられなかったり・・・、と色々悩みがありました。
(患者さんの側からすると、もの凄く面倒な事を強いられる訳ですから、大変だったのですね。)

 ところが、インプラント( 矯正 用のインプラントも)は、骨に固定されていて、力を加えられても歯と違って動くことはありません。
すなわち、この動かないインプラントを固定源として矯正力をかければ、反作用を考えずに作用だけを考えて、矯正力を加えることが出来るわけです。

インプラント矯正の適応症

 動かないインプラントを固定源として、 矯正 治療において様々な使い方をすることが出来ます。
そのなかでも、以下の矯正治療に際して、従来の 矯正 テクニックよりも確実で大きな効果を上げることが出来ます。

  1. 前歯を最大限に奥へ引っ込めたい。 【Maximum Anchorage】
  2. 奥歯全体を更に奥へ動かしたい。 【奥歯全体の遠心移動】
  3. 前歯を歯肉方向へ垂直的に押し込みたい。 【前歯の圧下】
  4. 奥歯を歯肉方向へ垂直的に押し込みたい。 【奥歯の圧下】

インプラント矯正における注意

矯正用と普通のインプラントの材料学的な違い

 歯列矯正 用のインプラントに使われる金属材料も、チタン合金です。
これは、普通のインプラント(歯が無い所に植立して、歯の代わりをする人工歯根)と同じ金属材料です。
大きさについては、普通のインプラントが直径4mm前後あるのに較べれば、矯正用のインプラントは直径1mm強であり、その大きさにはかなりの違いがあります。
インプラント表面の1次加工は両者とも、セルフ・タッピング(捻じ込み式)を意識したネジ状の構造で大きな違いはありません。  しかし、2次加工については、矯正用のインプラントが表面が割と滑らか(鏡面加工とまでは行きませんが・・)なのに較べて、普通のインプラントでは微細な凸凹を持つ各種の加工がなされています。

矯正用と普通のインプラントの骨との接触の違い

 普通のインプラントのような骨結合はしていない。
 歯列矯正 用のインプラントは骨結合を起こして、骨と固定されているわけではありません。  骨に食い込んで物理的に結合しているのです。
一方、普通のインプラントはくい込んで物理的な固定と同時に、骨結合という生化学的な接着が同時になされていて、非常に強力に骨とくっついて固定されているのです。
そのため 歯列矯正 用のインプラントは、植えたその日に即日使用が可能で、矯正治療に使い終わったら逆回転のトルクを加えて簡単に除去することが出来ます。
(普通のインプラントでは、要らなくなったから除去しようと思っても、骨と生化学的に接着もしているので、周りの骨を削りかなり大掛かりな外科的な侵襲を加えないと外せません。)

 分かりやすく例えると、
矯正用のインプラントは、板にネジがくい込んでいるだけです。  一方、普通のインプラントは、接着剤の付いたネジが板にくい込んでいるのです。

矯正用と普通のインプラントの成功率の違い

 矯正 用のインプラントでは、時に失敗することがあります。
上手く骨に食い込んで固定されず、グラグラと動揺してしまい、臨床的に矯正治療に用いることが出来ない、という事態が起きることもあるのです。
(このように失敗に至るケースでも、手術した当日はしっかりと初期固定されて問題が無さそうに見えるのです・・・。)

 矯正用のインプラントでは成功率を80%程度、としている報告もあります。
普通のインプラントでは成功率が95%以上、臨床的にはほぼ間違いなく上手く行く!という感覚と較べると、大きな違いがあります。


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歯列矯正治療でインプラントを用いて行うインプラント矯正について説明しています。